その16 2004.4.17
右のグラフは花の咲いている個体の節間の長さを測ったものです。
第一節間とは根元に近い方から数えた第1葉と第2葉の間の茎の長さ、第二節間は第2葉と第3葉間の茎の長さのことです。「第一節間」のエゾキスミレの表では節間が0mmであったのが5個体、0〜5mmまでが3個体あったということを表しています。実際の計測は1mm単位で行っているのですが、前にも少し書きましたようにあまり正確ではありません。しかし、このような5mm単位のヒストグラムにまとめると測定誤差もかなり吸収されてしまうのと、各変種ごとのおおまかな違いを見るのが主な目的ですからこれで良いのではないかと思います。
「第一節間」のグラフで、オオバキスミレは0〜5mmにピークを持つ正規分布のようなきれいな山型になっています。この形を基本としますと、エゾキスミレ、ケエゾキスミレ、フギレキスミレの3変種は山全体が左へ移動したような分布となっています。オオバキスミレに比して節間が全体に5mm程も縮まった形です。
それに対してフギレオオバキスミレ、フチゲオオバキスミレの2変種は逆に右側に5〜10mmもシフトしています。その勢いは第二節間にもおよび、下部の三枚の葉が離れてつく形のものが20%〜30%にもなっています。
ここでもフギレオオバキスミレには他の変種とちがった「勢い」のようなものを感じます。フチゲオオバキスミレは一見フギレオオバキスミレと同じような傾向が見られますが植物の居場所も性質もよほど違っています。私はフチゲオオバキスミレは本当に多年草なのだろうかというほのかな疑いを抱きはじめました。このことを確かめるために、昨年自生地の一区画をデジカメでしっかりと写し撮ってきました。今年も来年も、今までと同じ場所に咲くのだろうか。少し通ってみようと思っています。
オオバキスミレの294個体の内、82個体が第一節間が0でした。これらの全てが葉が3枚以下で、花も一花がほとんどです(11個体が二花)。道内で、品種ミヤマキスミレというのはこのような形のものを指すのだと思います。
左下のグラフは今までに見たオオバキスミレの植物高と第一節間の長さを散布図にしたものです。分布が南北に大きく離れているので、地域ごとに色分けをしてみたところ道北のオオバキスミレのほうが道南より全体に大きいという思わぬ結果が出てしまいました。
たしかに雪解けの関係で道南の方が探訪の時期がいつも早いということはありますが、雪解けから花が見られるまでの日数は同じだと思うのでこのことが影響しているとは考えにくいのですが、この問題はしばらく頭の片隅で暖めていたいと思います。
このグラフから道南・道北それぞれに第一節間が0のものは植物高も低いものが多く、全体として成長不良の印象が読み取れます。
ちなみに植物高の平均値は道南のオオバキスミレ全体で143.4、第一節間0のもの134.0。道北のオオバキスミレ全体で178.6、0のもの169.8となり、やはり両地域とも成長が良くないせいではないかという結果になりました。
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