その7 2004.3.31

オオバキスミレ類の形について

 亜種オオバキスミレの分布図のあとは亜種ケエゾキスミレに属する3変種の分布図ですが、改めて図示するほど もないほど、簡単なので、その前にいったん休憩して、少しオオバキスミレの形態についておさらいしてみたいと思います

 右の絵は道南のオオバキスミレの一茎をスケッチしたものです。

 地面から花をつけた茎が一本立ち上がります。その茎の一番上に葉が3枚ついています。この花は葉が3枚です が、4枚以上つくものもあります。この花は、一番下の葉が、他の2枚と少し離れてついています。この最下の葉が離れるか、それとも輪生状につくのかは変種 以下の分類に重要なポイントとされています。

 最下の葉の腋から花柄が1本のびて花を一つつけています。地面から出た茎がある高さまで達して節となり、そ こで葉を1枚出して、その腋から花茎を出します。さらにまた茎を伸ばし、第2葉をつけます。第2葉の葉腋から出ている二つ目の花は最初の花から何日か遅れ て咲き、花期を長引かせます。 第3葉は第2葉と同じ所から葉柄が出ているように見えますが、たくさん花を見ていきますと、何mmか離れるものも珍しくあ りません。従ってこれは節間が極端に短くなって同じ所から出ているように見えるのだろうと思われます。葉が4枚ありますと、上の3枚が輪生状に着き、最下 の1枚のみが離れているように見えます。

 花は一つしかつかないこともありますし、三つ以上をつけることもあります。

 花びら(花弁)は5枚あります。一番下側の花弁は他の4枚と少し形が違っていて唇弁と呼ばれています。根元 の部分がふくらんでいて蜜をためる距と呼ばれる袋になっています。オオバキスミレはスミレ類の中でこの距が小さくて花の後ろにあまり飛び出さないのが特徴 です。唇弁の中央には紫色の筋が入ります。蜜のありかを示す道しるべと考えられています。唇弁に隣り合う二枚の花びらを側弁と言いますが、側弁にも二本ほ ど筋があります。そして、側弁には中程に短い毛がまとまって生えています。一番上方につく二枚の花びらは上弁と呼ばれ、開花すると少し後ろに反り返りま す。
 花弁の長さや幅は花ごとに少しずつ違いますが、全体としてだいたい一定で、変種による違いといったことはないようです。例えば、このスケッチの第2花の ほうが第1花より少し小さめです。

 雌しべの図をいがり図鑑に習って三つ描きました。上から順に、真上から見た姿、横から見た姿。正面から見た 姿です。雌しべの頭の部分にはちょうどほおひげのように短い肉質の毛が生えています。側弁の毛に似ていますがもう少し短いようです。毛の多少は個体によっ て変化がありますが、これも変種による違いはみられません。この個体は、正面からは毛が見えませんが、時に少しはみ出して見える個体もあります。雌しべの 根元には細くなって折れ曲がった関節部分があって、そこから上の部分が揺れ動きやすくなっています。昆虫が蜜を吸うときに雌しべにふれて揺れ、雌しべの根 元を覆う雄しべが花粉を散らす役目をします。
 雌しべの正面図が頭の部分ですが、その下の方にある小さな○は柱頭です。側面図に見られるように少しくぼんでいます。

 葉は第1葉が一番大きくて、2枚目3枚目になるに従って葉は小さく細くなります。葉の出る角度はそれぞれが 144度離れることによって、3枚が併せて茎を中心とする空間をうまく占有しているように見えます。そのことと関連するのかどうかは分かりませんが、4枚 目の葉は普通他と比較してとても小さく、細長く、光合成にはあまり役立たないように見えます。


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